はじめに ── モデルYとの2年間をへての新たなチャレンジ
先日テスラモデルYを乗り始めてから2年間の体験記を記事に書きました。その中で次のフェーズとしてエネルギーの自給自足を試したい旨を書きました。
そこで今回は、「エネルギーの自給自足が可能なのか」をまずは調査、試算してみます。本記事の執筆時点では具体的な見積もりまで進んでいませんが、自宅の状況やテスラ実際の運用状況を加味してプランしてみます。
自宅の環境を整理する
まず、我が家の電気消費を数字にしてみます。電力会社からのレポートで過去1年分の使用量を確認すると、年間で約6,400 kWhでした。月別で見ると、エアコンをフル稼働させる冬(1〜2月)が最大で830 kWh前後、エアコンをあまり使わない春(5〜6月)は350 kWhほど。季節差がかなり大きい家です。
これにモデルYの充電分を加算する必要があります。2年間の年間平均走行距離は5,000 km。モデルYの実電費を約6 km/kWhで計算すると、年間の充電量は約833 kWh。つまり、家全体の年間総電力需要は7,233 kWhということになります。

契約中の電気料金プランについて
現在は東京電力のプレミアムLを契約しています。このプランは少し特殊な構造で、月400 kWhまでが13,927円の定額、超過分が39.70円/kWhの従量課金です。グラフの濃い部分が従量課金が発生している月。冬は大きく超えてコストが跳ね上がり、春は定額の範囲内に収まっています。

屋根の条件
茨城県の平屋という環境は、太陽光発電の立地として恵まれています。周囲を遮る建物が少なく、私の家の環境だと南向き屋根の有効面積は60〜80 m²ほど確保できます。茨城県の年間日射量は約1,380 kWh/kWpで、全国的に見ても良好な水準です。この条件下で9.9 kWのシステムを搭載した場合、年間の発電量は約13,662 kWhと試算できます。年間総需要7,233 kWhに対して約189%、需要の約2倍近くを発電できる計算です。
システムの全体像 ── 3つのピース
① 太陽光パネル(9.9 kW)
なぜ10 kWではなく9.9 kWなのか。ここに重要な理由があります。太陽光発電の売電制度(FIT)では、10 kW未満は「住宅用」、10 kW以上は「産業用」として扱われ、売電単価が大きく異なります。2026年度の初期投資支援スキームで、住宅用は最初の4年間が24円/kWh、産業用(屋根設置)は19円/kWh。0.1 kWの差で10年間の売電収入が数十万円変わります。見積もりの際は業者と必ず確認する予定です。
メーカーは長州産業、パナソニック、カナディアンソーラーあたりを候補に、複数社から相見積もりを取ります。発電効率だけでなく、25年保証の内容と国内サポート体制も判断軸です。
② 蓄電池
ここが今回の検討でいちばん悩んでいる部分です。
Powerwall 3を選べばテスラアプリ一つで完結します。国産蓄電池を選ぶ場合はV2H機器(ニチコンやオムロンが対応)を別途導入することで、モデルYのバッテリーを非常用電源として活用できます。テスラを乗っているとPowerwallを選ぶアドバンテージを感じるのが正直なところですが、客観的に評価すべきと考えています。

費用の全体感をざっくり把握する
見積もりはこれから取得する段階なので、公開データをもとに相場感を整理します。
| 項目 | 相場レンジ | 試算中立値 |
|---|---|---|
| 太陽光 9.9 kW(工事込み) | 198〜257万円 | 約220万円 |
| 蓄電池 Aルート(Powerwall 3) | 130〜150万円 | 約140万円 |
| 蓄電池 Bルート(国産・補助金前) | 250〜300万円 | 約275万円 |
| 国の補助金 DR(Bルート) | 最大60万円 | △60万円 |
| 茨城県・市補助金 | 数万〜十数万円 | △10〜20万円 |
Aルート合計(参考):約360万円(Powerwall 3+太陽光、補助金なしの場合) / 補助金が使えれば大幅に下がる見込み
Bルート合計(中立値):約440万円(国産蓄電池+太陽光、補助金60万円引き後)
Powerwall 3のJET認証が取得されれば、補助金込みでAルートが国産より安くなる可能性があります。ただし正式発売前のため不確定要素が多く、以降のシミュレーションはBルート(440万円)を軸に計算します。
2026年度のDR補助金は人気が高く短期間で終了するケースもあるため、注意が必要そうです。
投資回収シミュレーション(試算)
プレミアムLと太陽光の相性について
計算してみると、9.9 kWシステムは全12ヶ月で太陽光の発電量が需要を上回ります。最も厳しい2月でさえ、発電1,052 kWhに対して需要830 kWhと余剰が出る計算です。蓄電池13.5 kWhで夜間をカバーすれば、保守的に見ても電気量は年間400 kWh程度まで激減します。
当然プランの切り替えを行うことになりますが、変更先は「従量電灯B(30A)」を想定しています。東京電力の規制料金プランで、基本料金は月935円、使用分は29.80円/kWhです。このプランを選ぶ理由は2つで、一つは燃料費調整額に上限がある規制料金のため、燃料価格が急騰しても電気代が青天井にならないこと。もう一つは、使用電気量が年間400 kWhほどの場合、基本料金の低さが決め手になること。スタンダードSも同水準ですが、燃調上限がない点で従量電灯Bがより安定しています。
この前提に立つと、プレミアムL(28.3万円/年)から従量電灯B(2.4万円/年)への変更で、年間節約額は約25.9万円となります。
売電収入(住宅用FIT・9.9 kW)
2026年度から始まった初期投資支援により、住宅用FITは最初の4年間が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhという2段階構造です。10年間の加重平均は約14.6円/kWhです。
余剰売電量:13,662 − 7,233 = 6,429 kWh/年
1〜4年目の売電収入:6,429 × 24円 = 約15.4万円/年
5〜10年目の売電収入:6,429 × 8.3円 = 約5.3万円/年
年間の合計経済効果
| 期間 | 電気代節約 | 売電収入 | 年間合計 |
|---|---|---|---|
| 1〜4年目 | 約25.9万円 | 約15.4万円 | 約41万円 |
| 5〜10年目 | 約25.9万円 | 約5.3万円 | 約31万円 |
| 11年目以降 | 約25.9万円 | なし(卒FIT) | 約26万円 |
回収期間のシナリオ別試算

「14〜17年は長い」と感じるか
この数字を並べると「すぐ元が取れる」話ではないとわかります。ただ、25年保証のシステムであれば、中立シナリオでも回収後に12年間の純プラス期間が続く計算です。
ここで少し「25年保証」の中身を補足します。主要メーカーの住宅用太陽光パネルには、製品保証と出力保証の2種類があります。製品保証は部品の不具合や破損への対応、出力保証はパネルの発電能力が一定水準を下回らないことを保証するものです。たとえばパナソニックや長州産業では、25年後でも初期出力の80〜81%以上を維持することを保証しています。言い換えると、25年後も「設計当初の発電量の8割」が保たれる前提でシミュレーションが成り立つということです。パワーコンディショナーは15〜20年程度で交換が必要になるケースが多く(費用目安15〜20万円)、保守シナリオにはこのコストも織り込んでいます。
さらに、FITの後半(5年目以降)に売電単価が8.3円に落ちるタイミングで自家消費率を高める運用に切り替えれば、経済効果はさらに安定します。そして、この試算に含まれていない価値があります。次のセクションで話します。
金額以外の観点
停電への備え
茨城は地震リスクが決して低くない地域です。Yahoo!天気・災害の地震履歴を調べると、「茨城県沖」を震源とする地震はこれまでに2,500件以上、「茨城県南部」は940件以上記録されており、関東の中でも地震の多発地帯に位置していることがわかります。実際、この記事を書いている2026年4月にも茨城県南部で最大震度5弱の地震が発生し、水戸市を含む県内各地で停電が起きました。「いつかあるかもしれない」ではなく、「また起きる」と考えておくのが現実的だと思っています。
では、太陽光と蓄電池があれば、停電時に実際どれくらい持つのでしょうか。13.5 kWhの蓄電池で、冷蔵庫・照明・テレビ・エアコンを同時使用した場合の消費は概算で1〜1.1 kWh/時間ほどです。蓄電池だけで考えると、おおよそ12〜13時間分——つまり夕方から翌朝まで、一晩を乗り切れる計算です。
ただし、ここに太陽光が加わると話が変わります。今回試算した9.9 kWの発電量の場合、冬の最も発電量が少ない1月でも1日あたり約34 kWhを発電できます。翌朝に太陽が出れば、蓄電池はまた満充電に近い状態に回復します。つまり晴れが続く限り、この状態は理論上ずっと続きます。数日間の停電であれば、うちは普段通りの生活をほぼ維持できる見込みです。
エネルギーを「見える化」する楽しさ
完全に個人の趣味ですが、テスラアプリで「今どの電気を使っているか」「どこに流しているか」がリアルタイムで見える体験は、これはガジェット好きにとって、単純に楽しい体験です。
まとめ
今回の検討でわかったこと
・9.9 kWの太陽光で、年間需要の約189%を発電できる試算
・プレミアムLから従量電灯B(30A)へ変更することで年間約25.9万円の節約
・FIT新制度(24円×4年→8.3円×6年)を活かし、1〜4年目の年間経済効果は約41万円
・初期投資440万円(Bルート・中立値)に対して、回収は約14年
・回収後は25年保証の範囲内で純プラスが続く
次のアクション
これから複数の施工会社に見積もりを依頼します。太陽光9.9 kWの屋根への搭載可否と費用、蓄電池の選択肢(国産かPowerwall 3か)、補助金の申請タイミング、この3点を中心に情報を集める予定です。
Powerwall 3については、JET認証の取得と日本での正式発売が確定してから最終判断するつもりです。それ次第でAルート・Bルートのどちらが有利かが変わってきます。
見積もりが出揃ったら、また記事にします。「結局どこに頼んだのか」「金額はいくらだったのか」「補助金はどこまで使えたのか」、リアルな数字ごと公開するつもりです。

データ出典・参考:経済産業省「令和7年度以降の調達価格等に関する意見」、東京電力エナジーパートナー プレミアムL料金単価表(2023年7月改定)、資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー」FIT買取価格一覧、各蓄電池メーカー・施工会社の市場相場(2026年3月時点)。太陽光発電量は茨城県の年間日射量1,380 kWh/kWpをもとに試算。実際の発電量は天候・設置条件により前後します。シミュレーションの数値はすべて参考値です。

