EVに乗り始めてから、「次のクルマは何にするか」を真剣に考えたことは一度もありませんでした。理由はシンプルで、選択肢がなかったからです。モデルYを購入した頃、同じ価格帯で比較検討に値するEVは日本市場にほとんど存在しませんでした。
それが2026年に入って変わりました。補助金後350万円台のトヨタ bZ4X、312万円のスズキ eビターラ、200万円台の日産リーフB5——価格帯も車種もひと通り揃った今、初めて「次に買うなら何か」を本気で考えてみました。
その前に:2年での乗り換えには「補助金返還」という論点がある
乗り換えを考え始めてすぐ気づいたことがあります。CEV補助金を受けた車両には、原則4年間(車種によっては3年間)の保有義務が課されます。この期間内に車を売却・譲渡した場合、受給した補助金の一部または全額を返還しなければなりません。また、返納完了まで新たな補助金の申請もできなくなります。
2年前にモデルYを購入した際に受け取った補助金は当時の水準(65万円程度)です。保有義務が4年であれば、2年時点での乗り換えは期間の50%を消化した状態になり、残存期間に応じた返還義務が生じます。仮に半額返還なら約32万円。新しいEVで受け取れる補助金(最大127〜130万円)から逆算すれば経済的には乗り換え自体は成立しますが、「補助金をもらったまま2年で乗り換える」ことが制度上想定されていない点は頭に入れておく必要があります。今回の記事はあくまで「乗り換えたらどうするか」の思考実験ですが、実際に動く場合は保有義務期間の確認が先決です。
モデルYの2年間で良かったこと
① 毎朝満充電で始まる日常
ガソリンスタンドに寄る手間がなくなり、残量を気にしながら走るストレスが消えました。日常の移動距離は片道30〜50km程度なので、500km超の航続距離は完全に余剰です。「もっと走れれば」という不安を抱えていた購入前の自分に、「その心配は不要だった」と伝えたい。
② アプリ一元管理の快適さ
テスラアプリで充電状況・車内温度・ドアの施錠確認・ソフトウェアアップデートをすべて管理できます。子どもを乗せる前に車内を温めておく、夏の炎天下でエアコンを事前に動かしておく——こういった使い方が2年間で完全に習慣になりました。
③ OTAで車が育つ感覚
2年間で複数回のソフトウェアアップデートを受け、インターフェースや走行性能が少しずつ変化しました。「同じクルマに乗り続けているのに、少しずつ変わっていく」という体験はガソリン車では絶対にありません。
正直に言う、惜しかった点
サービス体制への不安感:大きなトラブルはありませんでしたが、修理が必要になったとき対応拠点が限られるという事実は頭の隅にあり続けました。今年に入って全国5店舗が一気にオープンするなど状況は改善していますが、トヨタや日産の販売・サービス網と比べれば差があります。
タッチスクリーン操作への慣れの問題:エアコン・ミラー・ワイパーほぼすべての操作がタッチパネル経由です。2年経って慣れましたが、運転中に視線を落とす頻度が多いことは事実です。同乗した家族からも「操作しにくい」という声が出ています。
2026年の「有力候補」を並べてみる
2年前には存在しなかった選択肢が、今や複数あります。国産・輸入を問わず幅広く候補を整理しました。
| 車種 | 本体価格 | 補助金 | 実質価格 | 航続距離 |
|---|---|---|---|---|
| テスラ モデルY(RWD) | 559万円 | 127万円 | 432万円 | 533km |
| トヨタ bZ4X(G・2WD) | 480万円 | 130万円 | 350万円 | 559km |
| トヨタ bZ4Xツーリング(4WD) | 640万円 | 130万円 | 510万円 | 734km |
| スズキ eビターラ(FWD) | 399万円 | 87万円 | 312万円 | 520km |
| 日産 リーフ B5 | 約350万円 | 129万円 | 約221万円 | 322km |
| BYD ATTO 3 | 約440万円 | 15万円 | 約425万円 | 470km |
| BYD DOLPHIN | 約310万円 | 15万円 | 約295万円 | 400km |
| ヒョンデ IONIQ 5 | 約524万円 | 約70万円 | 約454万円 | 430km |
| メルセデス EQA(250+) | 約660万円 | 約70万円 | 約590万円 | 500km |
「自分の基準」で各候補を評価する
テスラ モデルY(RWD):実質432万円
現在乗っているクルマです。OTA更新で車は引き続き進化しており、テスラのエコシステムは太陽光・蓄電池の導入計画とも連動しています。スーパーチャージャーの充電網という圧倒的な強みも健在です。「今すぐ乗り換える積極的な理由はない」というのが正直なところです。
トヨタ bZ4X(G・2WD):実質350万円
最も気になる候補のひとつです。大幅アップデートで静粛性が格段に向上し、全国3,000店舗以上のサービス網という安心感があります。実質350万円という価格はモデルYより80万円安い。ただしスーパーチャージャーに相当する充電インフラはなく、テスラのエコシステムを手放すコストをどう評価するかが判断の核心になります。
トヨタ bZ4Xツーリング(4WD):実質510万円
全長を延ばし荷室を拡大したツーリングは子どもが増えた今の生活には魅力的です。航続734km・4WDという性能はモデルYロングレンジAWDと正面から競合します。価格は実質510万円とモデルY RWDより高くなるため、ファミリーユースを優先するなら選択肢に入る一台です。
スズキ eビターラ(FWD):実質312万円
コンパクトSUV・520km航続・実質312万円という組み合わせは2年前には存在しなかった。国内最安クラスのSUV系EVとして注目度が高い一台です。ただしOTAの実績やアフターサービスの充実度はまだ未知数。長期保有を前提とするとやや判断しにくい部分があります。
日産 リーフ B5:実質221万円
補助金129万円で実質200万円台前半という価格は圧倒的です。V2H対応という点で太陽光×蓄電池との連携も見据えた選択肢として評価できます。ただし322kmの航続距離は茨城県から長距離移動を考えると心もとない場面が出てくるため、メインカーよりセカンドカーとしての位置づけが現実的です。
BYD ATTO 3:実質425万円
補助金が以前の45万円から15万円に激減したことで、モデルYとほぼ同じ実質価格帯に入りました。「価格で選ぶ理由」が薄れた分、車としての純粋な魅力で判断する局面になっています。ブレードバッテリーの安全性・耐久性は評価できますが、残価設定とアフターサービスの充実度は引き続き確認が必要です。
BYD DOLPHIN:実質295万円
実質295万円は国産コンパクトEVと同等以下の価格帯です。航続400km・コンパクトなボディという組み合わせは、都市部での日常使いに割り切れるなら合理的な選択肢です。ただしメインカーとして選ぶには充電インフラとの相性確認が重要になります。
ヒョンデ IONIQ 5:実質454万円
独特のレトロフューチャーなデザインと、V2H対応という実用性を兼ね備えた一台です。800V超急速充電対応で長距離時の充電時間を大幅に短縮できます。補助金が約70万円と少ないため実質454万円とモデルYより高くなりますが、デザインと将来のV2H活用を重視するなら検討に値します。
メルセデス EQA:実質590万円
実質600万円近い価格帯は「プレミアムブランドの体験を買う」という判断として成立します。インテリアの質感・乗り心地・ブランドサポートという点では他のEVとは別の軸で評価できます。ただし補助金は約70万円と少なく、メインカーとして選ぶには慎重な判断が必要です。
結論:「今すぐ変える理由はない。でも次は本当に迷う」
2年前は「モデルY一択」でした。今は違います。
現時点でモデルYを手放す積極的な理由はありません。OTA更新で車は引き続き進化しており、テスラのエコシステムは太陽光・蓄電池の導入計画とも連動しています。充電インフラという圧倒的な強みも健在です。加えて補助金の返還義務という現実的な制約もあります。
ただ、次の乗り換え時には選択肢の広さが全く違う。bZ4Xはようやく本当の意味でモデルYの競合になってきました。BYDは補助金が減った分だけ「純粋な車としての魅力」で勝負する局面に入っています。ヒョンデのV2H対応やメルセデスのプレミアム体験も、それぞれ異なる魅力を持ちます。
次回の乗り換えが保有義務期間を過ぎた3〜4年後であれば、選択肢はさらに増えているはずです。「迷える状況」は、EVが本当の意味で普及し始めたサインだと思っています。
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