2026年1月、EVへの補助金上限が90万円から130万円に引き上げられました。ニュースを見た時、素直に「いい流れだ」と思いました。ところがほぼ同じタイミングで、もうひとつの政策が決まっていました。2028年5月から、EVに新たな税負担を課すという方針です。
補助金を増やしながら、同時に増税する。この矛盾した政策判断が何を意味するのか、モデルYオーナーとして自分ごととして整理してみました。
「アクセル」:なぜ補助金は130万円まで増えたのか
CEV補助金の見直しは、日米関税交渉が直接の引き金になっています。米国側がEVとFCV(燃料電池車)の補助額差を「非関税障壁」と指摘したことで、両者の差を165万円から20万円に縮める方向で調整が進みました。
要するに、純粋に「EVを普及させたい」という政策判断だけではなく、外交的な圧力への対応という側面があります。補助金拡大の背景にこうした事情があることは、あまり報じられていません。
補助金の額は車種とメーカーの評価点数で決まる仕組みで、現在テスラ モデルY・モデルY Lは127万円が交付されます。充電インフラの整備状況や整備人材の育成といった項目でテスラが高評価を得ており、実質的に上限近くを受け取れる状態です。
「ブレーキ」:2028年から始まる重量課税とは何か
補助金拡大の報道の陰に隠れるように、もうひとつの方針が同じタイミングで決まっています。
2028年(令和10年)5月1日以降の車検から、EVやPHEVに対して重量税に一定額を上乗せする「特例加算」が導入される方針です。また、2028年以降に新車登録されるEVの自動車税について、これまでの一律「1,000cc以下のガソリン車相当」から、車両重量に応じた新方式に切り替える見直しも進んでいます。
現時点で税率の詳細は2027年度の税制改正で確定する予定ですが、「EV以外の自動車(ガソリン車等)の現行税率と同程度」の負担を求める方針とされています。
モデルYの車両重量は約1,900〜2,000kg程度です。重量に応じた課税方式が導入されれば、現在の優遇水準より年間数万円単位で負担が増える可能性があります。ただし2028年以降の新車登録が対象のため、現在乗っているモデルYへの直接の影響は限定的です。
なぜ「アクセルとブレーキ」を同時に踏むのか
この一見矛盾した政策の背景には、構造的な問題があります。
ガソリン税だけで年間約3兆円の税収があり、その多くが道路の建設・維持費用に充てられています。EVはガソリンを使わないため、この財源を一切負担していません。
EVが普及すればするほど、道路の維持財源が細っていく。そのコストは誰かが負担しなければなりません。「道路を走るクルマが道路代を払う」という考え方は、論理としては筋が通っています。
道路維持の財源確保が課題となるなか、ガソリン車よりも重く道路への負荷が大きいEVに相応の負担を求めるという政府の説明も、一定の合理性はあります。一方で、経済産業省や自動車業界からは反対意見も出ており、国会議員の間でも賛否が分かれています。
「今が買い時」は本当か——モデルYオーナーとして試算してみた
よく見かける「補助金が多い今がEVの買い時」という論調は、正しいでしょうか。整理すると、現在の優遇状況はこうなっています。
| 項目 | 現在(〜2028年) | 2028年以降 |
|---|---|---|
| CEV補助金(モデルY) | 127万円 | 継続(予算次第) |
| 重量税(新車・1回目) | 免税 | 免税継続 |
| 重量税(2回目以降) | 免税 | 特例加算(増税) |
| 自動車税 | 最低区分 | 重量課税に移行 |
| エコカー減税 | 適用 | 2028年4月末まで延長 |
現時点でEVを購入すれば、2028年までの車検2回分は従来の優遇が続きます。ただし2028年以降の車検からは重量税の特例加算が始まり、2028年以降の自動車税も重量課税への移行が予定されています。
「今が買い時かどうか」は、購入後何年乗るかによって変わります。2〜3年で乗り換えを前提とするなら現在の補助金メリットは大きい。一方、10年以上乗り続けるなら、2028年以降の税負担増も含めたトータルコストで判断する必要があります。
この政策が示すもの
今回の「補助金増額+重量税導入」という組み合わせは、ひとつの転換点を示していると感じます。
「環境に良い車=税金が安い」という単純な公式が、少しずつ変わろうとしています。「道路を利用する分、公平に負担を分かち合う」という新機軸への移行は、EVが特別扱いから「普通のクルマ」として社会に組み込まれていく過程のひとつです。
補助金の恩恵を最大化したいなら今。長期保有のコストも含めて慎重に考えたいなら、2028年の税率確定を待ってから判断するのも合理的な選択です。
※本記事の数値・スペックは2026年4月時点の公開情報に基づきます。補助金額は概算であり、実際の交付額は申請時期・条件によって異なります。
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