ホンダの電動化は本当に遅れているのか?EV戦略の方向性を考察

「ホンダのEV戦略は遅れている」——そんな言葉を耳にする機会が増えました。

確かにトヨタや日産、中国勢が次々とEVを市場に投入する中で、ホンダの電動化は控えめに見えます。しかし、本当に遅れていると言い切れるでしょうか?

ホンダはこれまで、エンジン技術やハイブリッド車で独自の価値を築き上げてきたメーカーです。その哲学を踏まえた上で、現在の電動化方針を読み解くと、表面的な「遅れ」とは異なる戦略が見えてきます。

本記事では、ホンダEV戦略の歩みを振り返りながら、現在地と今後の方向性を考察します。

ホンダが“EVに慎重”だった理由

ホンダは早くから電動化技術に取り組んできましたが、「EVメーカー」としての存在感を強く打ち出すことは避けてきました。理由は明確です。

それは、「人とクルマの一体感」というホンダの理念が、単なる電動化ブームとは相容れないと考えていたからです。

トヨタがハイブリッド(HV)で燃費効率を磨き、日産がリーフでEVを量産化した時期、ホンダは「走りの楽しさを保ったままの電動化」を模索していました。つまり、“電動化ありき”ではなく、“人の感覚に寄り添う技術”を優先したのです。

この姿勢は、結果として市場投入の遅れにつながりましたが、同時に「独自のホンダらしさ」を失わないための慎重な判断でもありました。

現在地:e:Nシリーズとグローバル戦略の布石

2022年、ホンダは中国市場で「e:Nシリーズ」を発表しました。これはホンダが本格的にEV市場へ踏み出した象徴的な動きです。

中国はEVの競争が最も激しい市場であり、ホンダはそこで「走り」「デザイン」「安心感」の3軸を打ち出しました。量より質を重視し、他社とは異なるプレミアム志向を狙っています。

さらに北米では、ゼネラル・モーターズ(GM)との提携を強化。共同開発によって2025年以降に複数のEVモデルを発売予定です。プラットフォームやバッテリー技術を共有することで、開発コストを抑えつつグローバル展開を加速させる狙いです。

このようにホンダは、自社単独でEVを急拡大するのではなく、戦略的提携を通じて段階的に進める姿勢を取っています。これは短期的には「遅れ」に見えますが、中長期的には安定した事業基盤を築く戦略的判断と言えるでしょう。

技術面での特徴:バランス型電動化

ホンダのEV戦略は「EV一本化」ではなく、ハイブリッド・PHEV・燃料電池(FCEV)を含めたマルチパス戦略が特徴です。

すべての地域やユーザーがEVにすぐ移行できるわけではないという現実を踏まえ、各市場の電力事情や走行環境に合わせた最適なパワートレインを提供する方針です。

特にホンダのe:HEV(ハイブリッドシステム)は完成度が高く、低速域ではモーター駆動、高速ではエンジン駆動という合理的な仕組みで、燃費と静粛性を両立しています。

この技術がEVへの移行を“滑らかに”進めるための中間ステップとして、国内外で高く評価されています。

一方で、2020年代後半からはEV比率を急速に高め、2040年には四輪車の新車販売を100%EV・FCEVにするという明確な目標を掲げています。表面的な出遅れに見える部分も、実はこの長期ビジョンの下で設計された「助走期間」と考えることができます。

課題:EV量産化とコスト構造の壁

ホンダが抱える最大の課題は、EVを採算ラインに乗せる量産体制の確立です。

現状、日産やBYDのようなバッテリー内製化は進んでおらず、LGエナジーソリューションなど外部パートナーとの連携に依存しています。バッテリー価格が車両コストの4割を占める中で、自社調達比率を上げることが課題です。

また、既存のガソリン車・ハイブリッド車との共存体制が長期化することで、社内リソースの分散が避けられません。

ただし、この「ハイブリッドを強みに残す」という選択は、完全EV化へ急ぐ他社とは異なる“現実的戦略”とも言えます。

今後の方向性:ホンダらしいEVとは何か

ホンダの未来戦略の核となるのは、「人に寄り添うEV」という理念です。

単にエンジンをモーターに置き換えるのではなく、運転する楽しさや人との調和をEVの中に再構築する——ここにホンダの本質があります。

たとえば、北米で発表された新ブランド「Honda 0(ゼロ)」では、デザイン・UX・安全性のすべてを一から見直し、次世代EVの体験価値を定義しようとしています。

https://global.honda/jp/news/2025/c250108a.html

また、AIや自動運転技術を組み合わせ、「移動中の安心感と快適性」を最大化する方向へ舵を切っています。単なるスペック競争ではなく、“感性に響くEV”を目指す点がホンダらしいアプローチです。

さらに、ホンダは航空・ロボティクス領域とも連携を深めています。小型モビリティや電動航空機、発電・蓄電技術を統合することで、EVを「移動×エネルギー×暮らし」のトータルソリューションに進化させようとしています。

これは単なる自動車メーカーの域を超えた“モビリティ企業”への転換を意味します。

まとめ

ホンダの電動化は、表面的には「出遅れ」に見えるかもしれません。しかしその内側では、エンジニアリング哲学と人中心の思想を守りながら、静かに次世代への準備を進めています。

リーフで先行した日産、量で攻めるBYD、システムで支配するトヨタとは異なり、ホンダは「人と機械の関係性」を再定義する方向でEVに挑んでいます。

EV時代の競争は、単にスピードの勝負ではありません。

技術・感性・社会価値のすべてを融合させた先に、ホンダらしい未来が見えてくるはずです。

その“静かな本気”こそ、ホンダが次の時代に残す最大の武器なのかもしれません。

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