電気自動車(EV)の普及が世界的に進むなか、日本でも徐々に法人向け利用が注目されています。これまでは個人ユーザーが購入する乗用車を中心に語られてきましたが、今後大きなインパクトをもたらすと期待されているのが「業務用EV」、特に営業車としての利用です。
ガソリン価格の高騰やカーボンニュートラルの流れを背景に、企業の車両管理部門は「次の更新はEVにすべきか?」という問いに直面しています。本記事では、営業車としてEVを導入する際のメリットとデメリットを整理し、導入の検討ポイントを考えていきます。
営業車にEVを導入するメリット
燃料コストの削減
EVの最大の魅力はランニングコストの安さです。ガソリン車と比べて、1kmあたりのエネルギーコストは半分以下になるケースも珍しくありません。特に都市部を中心に毎日数十キロ走行する営業車にとって、電気代の優位性は大きな経費削減につながります。
メンテナンスコストの低減
EVはエンジンオイル交換が不要で、トランスミッションや排気系部品も存在しません。可動部品が少ないため故障リスクも低く、結果としてメンテナンス費用が軽減されます。フリート全体で見ると、この差は年間数十万円単位のコスト差になることもあります。
企業イメージ向上・CSR効果
環境に配慮した取り組みは、企業の社会的責任(CSR)やESG経営の一環として評価されます。訪問先にEVで乗り付けることで、取引先に「環境意識の高い会社」という印象を与える効果もあります。特に自治体や大企業との取引では、こうした姿勢がプラスに働くケースが増えています。
税制優遇・補助金の活用
国や自治体の補助金を利用すれば、導入コストを大きく下げられる場合があります。さらに「グリーン化特例」など自動車税や重量税の優遇もあり、総所有コスト(TCO)で見ればガソリン車に劣らないケースも出てきています。
営業車としてEVを使うデメリット
航続距離の制約
現状のEVは1回の充電で200〜400km程度が一般的です。都市部の短距離営業であれば十分ですが、地方での長距離移動や急な出張が多い場合には不安要素となります。また、エアコン使用や冬季の暖房利用で実際の航続距離が短くなることも課題です。
充電インフラの不十分さ
都市部では急速充電器の設置が進んでいますが、地方ではまだ十分ではありません。営業ルート上で充電スポットを探す手間や、充電待ち時間が業務効率に影響する可能性があります。業務で使う以上「いつでもどこでも使える」安心感が重要ですが、現状ではインフラ面が足かせとなる場合もあります。
車両価格の高さ
EVはガソリン車と比べて車両価格が高く、補助金を差し引いても初期導入コストが重荷になることがあります。リースやローンを利用して平準化する方法はありますが、フリート全体での入れ替えを考えると投資額が大きくなります。
車種の選択肢がまだ少ない
日産「サクラ」やホンダ「N-VAN e:」など商用利用を想定したEVは登場していますが、選択肢はまだ限られています。特に営業車として定番だった小型セダンやコンパクトカーのEV版は少なく、納期が長いケースもあり「欲しいときにすぐ手に入らない」問題が存在します。
EV営業車の導入に向けた検討ポイント
走行距離と利用エリアの分析
導入前に必須なのが、自社の営業活動における走行距離の把握です。1日の平均走行距離が50〜100km程度であれば、EVは十分に対応可能です。逆に1日200km以上走る営業スタイルであれば、まだガソリン車やハイブリッド車の方が現実的です。
社内インフラ整備の必要性
営業所や事務所の駐車場に充電設備を導入するかどうかも検討ポイントです。夜間に充電できる環境を整えれば、日中に充電する手間を省き、業務効率を落とさずに済みます。導入には初期投資が必要ですが、中長期的にはコスト削減に直結します。
リース・カーシェアを活用した試験導入
いきなり全社的に導入するのではなく、リースやカーシェアを利用して一部車両で試験導入する方法もあります。実際に運用してみることで「どこにメリットがあるか」「どの部署に適しているか」を検証でき、導入リスクを減らせます。
EV営業車を取り巻く今後の展望
商用EVの拡大
日産やホンダに加え、トヨタや海外メーカーも商用EV市場に参入し始めています。軽バンやコンパクトタイプのEVが増えれば、営業車としての選択肢も広がっていくでしょう。
政策による後押し
政府は2035年までに新車販売を電動車100%にする方針を掲げています。営業車も例外ではなく、今後は自治体や企業に対して「業務車両のEV化」を促す動きが強まると予想されます。
CO2削減圧力と企業価値
大手企業を中心に「サプライチェーン全体でのCO2排出削減」が求められる時代です。営業車をEVに切り替えることは、取引先への説明責任や入札条件の一環として重要性を増すでしょう。
まとめ
営業車としてEVを導入することには、燃料費削減やCSR効果など大きなメリットがあります。一方で、航続距離や充電インフラ、車両価格の高さといった課題も無視できません。
現時点では「都市部・短距離中心の営業活動」に最も適しており、地方や長距離移動が多い場合は慎重な検討が必要です。ただし、商用EVのラインナップ拡大や政策の後押しによって、この状況は急速に変わる可能性があります。
企業にとっては、まずは一部部署での試験導入から始め、実データをもとに本格展開を検討するのが賢明でしょう。EV営業車は単なるコスト削減策にとどまらず、企業の未来を左右する「環境経営戦略」の重要なピースとなりつつあります。
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