世界各国が脱炭素社会の実現に向けてEV(電気自動車)の導入を加速させるなか、日本はその波に乗り遅れていると指摘されます。しかし、日本が本当に遅れているのか、また巻き返すチャンスはあるのか。この記事では、世界と日本のEV市場の実態を比較しながら、政策、産業構造、企業戦略の観点からその可能性を探ります。
世界のEV市場の拡大と日本の現状
2023年時点で、世界のEV(BEV+PHEV)販売台数は年間1,400万台を突破。これは新車販売全体の約18%に相当します。特に中国と欧州の伸びが顕著で、世界市場を牽引しています。
- 中国:2023年のEV販売台数は約820万台。BYDやNIOといった新興企業が躍進し、EV比率は約35%に到達。
- 欧州:ノルウェーは新車販売の90%以上がEV。ドイツやフランスでも20〜30%の比率に達しています。
- アメリカ:テスラを筆頭にEVシェアは約8%。IRA(インフレ抑制法)によりさらなる加速が期待されます。
一方、日本のEV販売比率は2023年でわずか2.5%程度(約8万台)にとどまり、主要先進国のなかで最低水準です。これは日本市場の多くが依然としてハイブリッド車(HEV)中心であることが大きな要因です。
ハイブリッド偏重と政府のEV政策の変化
日本がEV普及に出遅れている背景には、トヨタを中心としたHEVの成功が大きく関係しています。プリウスをはじめとするハイブリッド車は燃費性能の高さや既存のインフラとの親和性により広く普及し、「環境に配慮した車=ハイブリッド」という認識が国民の間に定着してきました。
しかし世界の流れは、よりCO2排出ゼロに近いBEV(バッテリー式EV)へとシフトしており、日本も国としての対応を迫られています。そのなかで、近年以下のような政策転換が見られます:
- グリーントランスフォーメーション(GX)推進:経済産業省が中心となり、2035年までに乗用車の新車販売を「電動車100%」にする方針を明示。
- EV購入補助金の拡充:最大85万円の補助金制度(条件付き)や地方自治体の独自支援策。
- 充電インフラ拡充計画:2023年に「2030年までに充電器30万基設置」という目標を発表。
こうした政策によって、少しずつではありますがEVの認知と普及も進みつつあります。
日系自動車メーカーの現状と課題
日本を代表する自動車メーカー各社は、EVに関して慎重な姿勢から脱却しつつあり、ようやくグローバルEV市場への本格参入を進めています。
- 日産:世界初の量産EV「リーフ」で先行したものの、その後の展開がやや停滞。現在はSUV型EV「アリア」で再起を図るとともに、EV専用プラットフォームの開発を進行中。
- トヨタ:長年にわたりハイブリッド重視の戦略を取ってきましたが、2023年にはEV戦略を大転換。「次世代BEVの本格展開」を掲げ、2026年までに10車種以上のEV投入を計画。また、全固体電池やエネルギーマネジメント技術でも独自の強みを追求中。
- ホンダ:GMとの提携を通じて北米向けEVを開発中。また、独自のEVブランド「e:Nシリーズ」の展開を開始。ソニーとの合弁会社「ソニー・ホンダモビリティ」も2025年のEV発売を予定。
課題は「車両価格の高さ」「充電インフラの未整備」「サプライチェーンの変革」といった構造的な要素にあります。特に国内ではEVラインナップが限られており、消費者の選択肢が狭いことも普及の妨げとなっています。
日本にとっての巻き返しの鍵とは?
EV後進国と評される日本ですが、以下のような点において巻き返しの可能性は十分に残されています。
- 全固体電池の商用化:トヨタやパナソニックがリードする次世代バッテリーの開発が進めば、航続距離や充電時間の課題を一気に解消できる可能性。
- エネルギー政策と連動したEV導入:再生可能エネルギーやV2H(車から家庭への電力供給)と連携した“持続可能なエネルギー社会”の構築において、日本は高い技術力を持っています。
- 軽自動車EVという独自の市場性:日産「サクラ」や三菱「eKクロスEV」など、軽EVの普及が地方部で進めば、地域密着型の移動革命も実現可能です。
また、充電器設置のための官民連携や、規制緩和による設置コストの低減といった取り組みが進めば、日本独自のEVエコシステムが形作られる可能性もあります。
まとめ:EVシフトの波をチャンスに変えるには
世界のEV市場が急成長を遂げるなか、日本は一見すると「出遅れた存在」と映ります。しかし、これまで蓄積してきたハイブリッド技術やバッテリー開発力、製造品質、地域密着型の製品設計力など、日本ならではの強みも少なくありません。
カギを握るのは「技術革新」と「戦略的な政策支援」、そして「社会全体の意識改革」です。日本がEV後発国から再び主役に返り咲くには、メーカー・行政・消費者が三位一体となってこの変革をチャンスとして捉える必要があります。巻き返しの舞台は、まさに今、整いつつあります。
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